2007年10月08日

福岡伸一『生物と無生物のあいだ』

福岡伸一『生物と無生物のあいだ』講談社現代新書

分子生物学者の研究生活のエッセイが、同時に分子生物学の歴史と研究内容の紹介になっている。
丁寧に文学的に説明されていて文系人間にも気持ちよく読める本。
以下、ポイントを抜粋。

◆生命とは自己複製を行うシステムである
   DNAの対構造
◆われわれの身体が原子に比べてこれほど大きい理由
   生命を構成する原子は絶え間ないランダムな熱運動であり
   すべての秩序ある現象は、膨大な数の原子が一緒になって
   行動する場合にはじめて、その「平均」的なふるまいとし
   て顕在化し、統計学的な法則にしたがう。
   その法則の精度は原子の数が増えれば増えるほど増大する。
   例外的な振る舞いをする粒子の頻度は平方根。
     100個のとき10個  10%
     百万個のとき1000個 0.1%
◆生物の形態形成には物理的制約がある。進化論だけではない。
   例:分節
◆エントロピー増大による熱力学的平衡状態に生物はならない。
 動的平衡にある。
   秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない。
   渚の砂の城がその形を保ったまま、打ち寄せる波によって
   砂粒を取り除かれ、そこに新たな砂粒が補完され、すべて
   入れ替わってしまうというモデル。
   生命とは動的平衡にある流れである
◆あるタンパク質には必ずそれと相互作用するタンパク質が存在する。
   相補性
◆細胞の内部の内部は外部
   細胞膜からどのようにして出るか
   細胞は自分自身の内部に別の内部を作ってそれを外部とした。
◆ES細胞について

仮説に反して、ある機能を欠落させたES細胞由来のマウスは正常に成長した。他方、一部だけ残したものは死んだ。
その理由は       

時間軸のある一点で、作り出されるはずのピースが作り出されず、その結果、形の相補性が成立しなければ、折り紙はそこで折りたたまれるのを避け、すこしだけずらした線で折り目をつけて次の形を求めていく。そしてできたものは予定とは異なるものの、全体としてバランスを保った平衡状態をもたらす。もしある時点で、形の相補性が成立しないことに気づかずに、折りたたまれてしまった折り紙があるとすれば、その折り目のゆがみはやがて全体の形までをも不安定なものにする。

生物には時間がある。その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度、折りたたんだら二度と解くことのできないものとして生物はある。

動的な平衡がもつ、やわらかな適応力となめらかな復元力に感嘆すべき。

結局、私たちが明らかにできたことは、生命を機械的に、操作的に扱うことの不可能性だったのである。


期待した結果が得られないことから、別の結論が得られることもあるんですね。   




posted by imajin at 08:00| Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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